小雨の海峡
雨模様の空だけど、厚い雲の景色も海峡には良く似合う。
流れは、東流れ。小倉方向から来る船の速度が潮に乗って早い。
ずっと通い続けてる海の見えるお店のカウンターに一人座り昼食。
シーザーサラダ、ポタージュスープ。少し雨に濡れた身体に染み渡る。
この街で、色んな事があったけれど、時間が過ぎてしまえば、今という時が在るだけ。
今も時間は刻々と過ぎ時計の針は進んでいる。
デミグラスソースのハンバーグは、空腹な身体を直ぐに充してくれた。時間を随分とかけて煮込んだ事が一口で解る。
別に過去に拘るつもりもないし、未来に過度の期待も無い。
しかし、こうやって、昔から居る店員さんと、長い時間、笑ってカウンター越しに、初めて昔話を話す事が出来るのも、生きていればこそ出来ること。
ティラミスとコーヒーを、洒落たカップで飲んで、満ち足りた時が、また進む。
歳を取る事は、悪くないと思う。
忘れたいような事も、無理して忘れなくても時間が解決してくれて来たような気がする。
キャッシャーを過ぎ、古いエレベーターへ乗り込む。店員さんの優しい声と笑顔が店の入口を包んだ。
海峡、流れは西に変わったようだ。